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飯田下伊那地域の近年における医療崩壊の経過と現状
 平成18年、当地域で分娩を扱う6産婦人科医療機関のうち3医療機関が相次いで分娩取り扱い停止を表明しました。この3医療機関で当地域の約半分800件の分娩を扱っていましたから、大変な事態となりました。そこで、当地の産婦人科医会・飯田医師会・包括医療協議会・保健所・地方行政がリンクした産科問題懇談会を設立し、協議を重ね、溢れた分娩は飯田市立病院へ集約する。南信州広域連合が資金提供し、市立病院分娩施設の増改築を行う。市立病院外来負担軽減のため、周辺産婦人科医療機関は当地域共通カルテを利用して、市立病院の妊婦健診をできる限り受け持つ。いわゆるセミオ-プンシステムを構築して、この危機を何とか乗り越えてきました。さらに平成23年3月より当地の分娩扱い施設は1つ減り2つだけとなります。現在、市立病院ではさらに集約される分娩に対応するため、分娩施設の拡充工事が行われています。
 一方、平成20年には市立病院の常勤眼科医がいなくなり、夜間・休日の眼科救急患者の診療ができなくなりました。眼科医会・医師会・包括医療協議会で協議の結果、当地開業眼科医療機関と飯田病院が在宅当番医制により平日夜間・休日・祭日の眼科救急診療体制を構築し現在まで継続しています。また、心臓外科医が市立病院からいなくなり、しばらく当地で心臓手術ができない時期がありました(現在は手術可能となっている)。
 このように、主に外科系医師の不足を中心に当地の医療崩壊が進んでいます。その原因は1)新臨床研修医制度により、大学医局の医師派遣能力が低下したこと。2)国主導による医療の集約化方針により、中小病院からの医師引き揚げが急速に進んだこと。3)産科に代表される労働環境が厳しい、または医療訴訟の多い専門科目の選択が今の若手医師から避けられる傾向があること。4)医師の専門化が進み、一人の患者さんの医療行為に複数の医師が必要になってきている(例えば産科の帝王切開手術は麻酔科医と新生児科医の立ち会いが必要など)。とにかく、幾つかの要因で地方の医師不足が全国各地で問題となっています。医師の絶対数不足ばかりでなく、都会や有名病院へ研修医が集まるいわゆる医師の偏在も地方の医師不足に追い打ちを掛けています。
医師確保対策アンケ-ト調査の施行(平成21年7月)
 そこで、飯田医師会では平成21年7月、全会員を対象に医師確保対策アンケ-ト調査を施行し、100名を超える多くの会員から返答をいただきました。その結果、現在当地域で働く医師達は地元出身者が多く、親の後継ぎ医師が多い傾向がありました。しかし、その子供達の多数が医師に育っていますが、その多くは他地域で活躍している現状が判りました。この医師達をどうしたらこの地域に呼び戻すことができるか、さらに他地域で活躍する当地出身医師達に当地における医療の現状をどう伝えていけるかが課題と感じました。
医師確保対策シンポジウムの開催(平成22年2月)
 さらに、平成22年2月に飯田医師会主催で医師確保対策シンポジウムを開催しました。国・県単位での医師確保シンポジウムはしばしば目にしますが、1医療圏だけの医師会主催のシンポジウムは全国初めての試みでした。アンケ-ト調査の詳細報告に引き続いて、当地6病院の院長から各病院の現状を報告して頂きました。市立病院以外の病院では医師だけでなく、看護師不足、他の医療従事者の不足も深刻で医療従事者の確保に苦慮している現状が報告されました。飯田保健所長からは長野県の医師確保対策室の取り組みを紹介して頂きました。平成22年度の長野県医師確保対策室の予算は医学生への奨学金資金を含めて5千200万円と高額でした。牧野飯田市長、小木曽根羽村長、加藤学衆議院議員、宮下一郎前代議士にもご発言を頂きました。
医師等確保対策委員会の設立(平成22年8月)
 飯伊包括医療協議会(飯田下伊那の医師会・歯科医師会・薬剤師会と保健所、地域行政の合意体 唐沢弘文 会長)は、医師および看護師など医療従事者の育成・確保のため地域行政・関係する機関・団体と協力して当地域医療の充実に質することを目的に「医師等確保対策委員会」を設置しました。委員会の構成は飯田市・下伊那郡町村会・飯田保健所・飯田医師会・歯科医師会・薬剤師会・飯伊地区病院関係者・飯田女子短期大学・飯田下伊那高校長会・下伊那校長会など委員は22名です。平成22年8月第1回委員会が開催され、委員長に椎名一雄(飯田医師会理事)、副委員長に矢澤昭彦(飯田病院事務局長)と原重一(飯田市保険福祉部長)が選出されました。活動事業案として

1) 当地域の医師および看護師など医療従事者の充足状況の現状把握
2) 当地域出身者を対象としたドクタ-バンクの創設・登録・運用
3) 医師など医療従事者育成への支援・援助
4) 長野県医師確保対策室との連携
5) 当地へ戻る医師など医療従事者の相談窓口と当地医療機関への推薦
6) 飯田女子短期大学との連携、当地医療機関への就職支援


を掲げました。 現在展開する事業は

1) 当地医師など不足状況の現状把握
2) 当地中学、高校へ県医師など奨学金制度の募集要項案内のポスタ-配布
3) 平成24年度医療従事者就職ガイダンス開催準備
4) ドクタ-バンク登録参加者26名


 17年後、当地域にリニア新幹線が通過します。その時活躍する医療従事者達へ夢を繋ぐことが、今を生きる私たちの使命と感じています。新たな皮袋を求めて、この地へ戻る期待のある皆様へメッセ-ジを送ります。
 平成22年12月
医師確保対策委員会
委員長 椎 名 一 雄
新聞掲載 信州日報 2010.2.23 信州日報 20101127 南信州新聞 20100902