飯田医師会は、長野県下10の二次医療圏のうち、飯伊(※)二次医療圏に属する唯一の医師会組織です。
(※飯伊は、飯田下伊那の略で、飯田市と下伊那郡13町村から構成されます)
長野県下における飯伊二次医療圏の特色は、面積(1,929km2)は最も広く、自治体数14は県内最多、人口は約15万(2023年)で人口密度は下から3番目に少ない地域です。 また、2019年に県から発表された医師偏在指数(医師数の指標)は下から4番目に少なく、医療資源も乏しい圏域であるのにもかかわらず、他の圏域との患者の流出入は最も少ない医療の域内完結度の最も高い医療圏です。
このように飯伊二次医療圏は、広大な面積と医療過疎の課題を有しますが、乏しい医療資源を効率的に運用するシステムを医師会が主導して構築してきた結果、各医療機関は質の高い医療を提供し、二次医療圏内での医療完結度を高めています。
しかし、医療圏を取り巻く環境は年々厳しくなっています。急速な人口減少と高齢化の進展や、開業医の高齢化による医療資源の脆弱化による影響が顕著になってきました。
例えば、周産期医療は分娩を取り扱う医療機関が減少し、既に飯田市立病院に集約されています。休日夜間における救急医療の確保については、休日夜間急患診療所や在宅当番を担う開業医が減少し、体制を維持することが難しくなっています。二次輪番を担う病院でも、医師の高齢化や働き方改革への対応等により、制度を維持することが厳しい状況になってきています。過疎化が進む周辺部においては、へき地診療所の医師確保が難しく、医師確保できない診療所もあります。
全国的な状況とはいえ、医師少数区域である当医療圏にとっては喫緊の課題であり、我々は、このような非常に厳しい状況を認識しながら、地域医療を守るため取り組みを前に進めていく所存です。もとより、飯田医師会だけでは解決できない課題であり、関係機関等と連携して進めてまいりたいと考えています。
行政や飯田保健福祉事務所をはじめ、全国的に高い評価を得ている「飯伊包括医療協議会」、2016年に設置した「南信州在宅医療・介護連携推進協議会」などと密に連携し、当圏域独自の地域包括ケアシステムの整備や課題克服に向けた新たな取り組みを進めてきた実績があります。新型コロナ対応については、地域外来検査センターを早期に立ち上げ、検査当日に結果を連絡する体制を構築し、感染拡大を防止してきました。介護福祉施設の新型コロナウイルスの感染対策として、対策マニュアル(第12版)を作成し啓発に努めるとともに、対策会議の設置手順やICNの早期派遣に努めてまいりました。
さらに当圏域には、近い将来にはリニア中央新幹線が開業を控えているという大きな希望もあります。飯田から東京と名古屋(品川駅⇔飯田駅⇔名古屋駅)への所要時間は各々30分程度となり、2大メガリージョンの中間駅として理想的な地理的条件を背景に、国内だけではなく海外からも注目を集める可能性を秘めています。新たなイノベーションの創設やインバウンドの増加など、大きな夢を語るに尽きない地域なので、これからの時代を担ってゆく若い世代の方々が、当地で希望に満ちた社会を、我々と共に作っていく夢を抱きたいと思います。
医療は、産業、教育と並び基本的な社会基盤の一つです。地域社会の中に箱物が豊富にあったとしても、医療が機能していなければ人は住めません。医療機関がなくなると人口流出が始まることも証明されています。それ故、医師会の存在理由は、地域社会の持続性を堅持するために、地域医療の充実に努めることです。
飯田医師会は、新たな課題の克服に向けて、他の医療専門職の団体並びに行政機関と協働し、地域医療をさらに充実する責務を果たし続けます。
尚、メニューにあります「飯田医師会の歴史」も是非読んで頂けましたら、飯田医師会の活動を理解する一助になると思います。