がんの地域連携クリニカルパス(以下、地域連携パス)とは、地域のかかりつけ医と病院の医師が、患者さんの治療計画及び診療経過を共有できる共同診療計画書のことです。
がんは、手術などの治療後も再発の可能性があり、定期的な経過観察が必要となります。しかし、再発の可能性が比較的低い患者さんも多く、必ずしも手術等を行った病院でなければその後の診療ができないということではありません。患者さん中心の効率的で質の高いがん診療を地域内で実現するには、患者さん個々の診療計画を早期に立て、連携する医療機関の間でその情報を共有し、それぞれの役割分担に基づいて継続的な診療を進めていくことが大切です。
患者さんにとって、病院への定期的な通院は、それ自体に時間がかかる上、混雑時は外来の待ち時間も大変長くなります。また経済的負担も大きくなります。一方、かかりつけ医では、高血圧、糖尿病、その他慢性疾患で以前から定期的な通院治療を受けており、また風邪などで日常的に受診しているという現状があります。病院医師と地域のかかりつけ医が連携してがん診療を行うことで、患者さんの負担は軽減され、医療機関においてもその機能や役割に基づいた質の高い安心・安全な医療を提供できるものと考えます。
飯田医師会では、病診連携推進委員会を中心に、がん診療における地域連携パスの協議・検討を重ね、地域内の医療機関において共通して利用できるように、より実用的な「共同診療計画書」を策定しました。
病院では手術等の急性期治療や放射線治療、定期的な精密検査などを担当し、かかりつけ医では、治療後の経過観察や投薬などの日常診療を担当しながら患者さんをフォローします。具体的には、医療者用パス(わたしのカルテ)と、患者さんが携行する手帳(南信州医療連携手帳)により、病院医師、かかりつけ医、患者さんが常に診療計画を確認しながら、患者さん中心の、安全・安心な切れ目のないがん診療を目指します。
飯田医師会では、5大がん(胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん、肺がん)の地域連携パスを整備し、既に運用しています。表1にこれまでの地域連携パス運用実績を示します。