高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症関連骨折である大腿骨頚部・転子部骨折も増加しています。本骨折は寝たきりの原因となるばかりではなく受傷後の生命予後に大きく影響を及ぼすことが多く、全身状態に問題がなければできる限り早期に手術を行い、しっかりしたリハビリが必要となります。大腿骨頚部骨折は、骨折部位により頚部骨折(内側骨折)と転子部骨折(外側骨折) があります。基本的には頚部骨折に対して、人工骨頭挿入術を行い、転子部骨折に対して骨接合術を行います。手術後は早期から荷重をかけての歩行訓練などリハビリを行うことがガイドラインでも推奨されています。しかし、大腿骨頚部骨折の治療は一つの病院のみで手術からリハビリまで行うと高齢者では2か月程度の入院となることが多くなり、急性期病院では入院ベッドが埋まり多くの患者さんへ手術ができなくなります。このため、急性期病院では手術治療を、回復期等の病院ではリハビリを行うという各々の専門性をいかした治療がされるようになっています。現在では全身状態、手術創の状態がよければ術後2週程度で転院するようになりました。
当地域では2012年8月より大腿骨頚部・転子部骨折地域連携パスを立ち上げました。当初、計画管理病院の飯田市立病院と参加病院として回復期リハビリテーション病棟を有する2病院の合計3病院でスタートしました。年々参加病院が増え、2020年1月現在では病院のみならず介護保険施設へも広がり、手術を行う計画管理病院は飯田市立病院、飯田病院の2病院、リハビリ等を行う参加医療機関は5つの病院(下伊那赤十字病院、下伊那厚生病院 、阿南病院、健和会病院 輝山会記念病院)と3つの老人保健施設(飯田市立病院介護老人保健施設ゆうゆう、円会センテナリアン、万年青苑)となり、合計10医療機関となりました。現在は、計画管理病院で年間250-270人が大腿骨頚部・転子部骨折の手術を受けられ、この連携パスを約7-8割の方が利用しています。大腿骨を骨折しても寝たきりとならず、より多くの方が歩行動作を獲得して元の生活場所へ戻れるように地域全体で骨折治療を進めたいと思います。