認知症は加齢とともに増える疾患であり、65歳以上では15%に見られ、認知症患者数は2025年には全国で700万人になると推定されています。しかし、物忘れ外来などを受診している人はこの中の一部(1/3以下)に過ぎません。認知症は物忘れ(記憶障害)と、段取りよく物事を行うことができない(遂行機能障害)ために、自力では日常生活や社会生活を営むことができなくなる疾患です。認知症になる前に、軽度認知障害(MCI)という状態が一定期間続きます。認知症の原因として半数以上を占めるアルツハイマー病に対して、2011年からは進行を遅らせる薬剤を、諸外国と同じように4種類使うことが可能になりました。残念ながら認知症の根本治療薬は未だに実用化されていませんが、早期に診断することは、本人と家族のQOL(生活の質)を高める上でも有効です。元々属していた職場やコミュニティーとの繋がりを維持できるよう支援し、役立つ情報を提供(入手)することができます。認知症の原因疾患による治療法の違いにも配慮した適切な治療ができるようになります。
飯田医師会では認知症を心配される方やご家族が、気軽にかかりつけ医に相談でき、早期に適切に診断ができるように、認知症連携パスを2011年夏に完成させました。かかりつけ医が容易に紹介することができるような専用の紹介用紙を作成しました。診断や治療方針について検討する四つの病院(飯田市立病院・飯田病院・健和会病院・瀬口脳神経外科病院)では、どの病院でも標準化された検査を行い、同一書式で返書を記載するようにしました。日常的な治療やケアマネージャーとの相談は、患者・家族の様子を一番分かっているかかりつけ医が担当し、時々4病院で専門医がフォローさせて頂く仕組みです。
かかりつけ医から物忘れ外来に紹介される方は、正確な統計ではありませんが2019年までの3年間の平均で、4病院全体で年間300名ほどです。その中で認知症連携ツールを用いて紹介されたのは1割程度です。この他にも紹介状なしで受診される患者さんもいますので、連携ツールを利用して受診される方はまだまだ少ないのが実態です。成年後見制度を利用するための受診や、運転免許証更新時の認知機能検査で異常を指摘され、診断書を希望して受診する方も増えています。認知症連携パス用の紹介状・返書は医師会ホームページからダウンロードすることが可能となっておりますので、どうぞお気軽にご活用下さい。